Steam Deckに限らずSwitchでもSDカードは使用すると思いますが、これまたあんまり知られてなくて「どこどこのメーカーがいいらしい」みたいな情報で買ってる人が沢山いるっぽいので。いわゆる初心者向けガイド記事になります。
カードサイズの分類(規格)
SDカードはSDカード、miniSDカード、microSDカードという感じでカードの大きさで3通りに分かれています。現代ではmicroSDカード以外はあまり使われませんが、PCではSDカードが挿せるスロットを準備することでアダプタを使用してmicroSDカードなども挿せるようにしている場合が結構あります。
まあ、Steam DeckとSwitchはmicroSDですので、それだけ覚えておけば良いです。
容量の分類
microSDカードは(SDカードも)容量によってさらに規格が分かれています。SD<SDHC<SDXC<SDUCの順にカード内の容量が大きくなります。
と言っても、SDUCは規格化されてはいますが1枚あたり2TB〜128TBという巨大な容量のものですので、今のところ現実に見掛けることはまずありません。
Steam DeckとSwitchは、容量64GB〜2TBのSDXCに対応しています。
(Switchは過去のシステムアップデートで対応したので手持ちのSwitchのシステムが古い場合は、インターネットに接続して本体更新をする必要があります。あとまあ、厳密に言えばSDとかSDHCにも対応していますが、64GB未満のカードを使うことなど現代ではないでしょう)
転送規格の分類
カードサイズ(microSD)、カード容量(SDXC)と来ましたが、次からはカードのスピード関係の規格です。
まず、カードのインターフェースを表す規格として、UHS(Ultra High Speed)があります。
UHS-I, UHS-IIなどのように表されます。UHS-IよりUHS-IIの方が接点が増えていたりします。
Steam DeckやSwitchはUHS-Iまでしか対応していません。(物理的にカードが刺さらないわけではなく、刺さるけど追加の接点とは接触できないのでUHS-I扱いで電気信号をやり取りするという感じです)
ちなみに理論値でUHS-Iは最大104MB/sec、UHS-IIで最大312MB/secとなっています。
現在販売されている一部のmicroSDカードは、UHS-II規格に対応して100MB/secを結構超える速度を実現していますが、UHS-Iまでしか対応していないSteam DeckやSwitchでは104MB/sec以上はどうやっても出ません。
スピードクラスとは?
続いて、より細かい速度の定義をする規格があります。
UHSスピードクラスと呼ばれるものです。これは一定のラインの最低転送速度が保証されていることを示すものです。過去にはUHSが付かない「スピードクラス」の1〜10がありましたが、これの10は保証する転送速度10MB/sec以上ということで、現代ではほぼ全てのカードが対応しています。
これに対して、UHSスピードクラスはUの中に1が書かれていればUHSスピードクラス1となり、最低10MB/sec、Uの中に3と書かれていればUHSスピードクラス3で、最低30MB/secが保証されています。
めんどくさいのですが、もう一つありまして、ビデオスピードクラスと呼ばれます。こちらも最低保証速度ですが、V30であれば最低30MB/sec、V60であれば最低60MB/secというふうになっています。
スピードクラスに対してUHSスピードクラスは上位互換の規格なのは当然ですが、ビデオスピードクラスはビデオ用……かと思っていたのですが、SD Associationによる解説によると、ビデオスピードクラスはUHSスピードクラスよりさらに上位の互換規格のようです。
(つまり、今となってはスピードクラスやUHSスピードクラスよりもビデオスピードクラスだけ意識していればいい……ほんとかな?)
まあ、いずれも最低書き込み速度を保証するもののようなので、一番大きなV90(最低90MB/sec以上)とかまで設定されているビデオスピードクラスだけ見てればいいというのは実務上そうなのかもしれません。
アプリケーションパフォーマンスクラスとは?
最後に、ちょっと毛色の違うものとして、アプリケーションパフォーマンスクラスというものがあります。
こちらはアプリケーション実行向けの指標で、A1とA2が規格化されていて、シーケンシャル最低処理速度はどちらも10MB/secなのですが、IOPSに違いがあります。
A1はランダムリードが1500 IOPS以上、かつ、ランダムライトが500 IOPS以上を保証しています。A2になると、ランダムリード4000 IOPS以上、ランダムライト2000 IOPS以上を保証しています。
IOPSというのは、I/O per secondです。つまり一秒あたりに読み書きできる回数ですね。
ビデオなんかは撮影中ずっと書くだけなので、連続したデータをある速度以上書ければOK、というのがビデオスピードクラスなのですが、こちらは1秒間の間で何回読み書きできる? って値ですね。
ゲームの場合は、一気に読み込んでメモリにロードすることが多く、逆に保存するときはメモリに保持していた値をセーブファイルに書き出す……みたいな感じでたまにしか書き出さないわけですから、頻繁にSDカードに読み書きするシチュエーションはあまりピンときません……。
……もしかして、SDカードにOS入れる人とかDB入れる人向けの指標なのかな……と思ったらAndroidとかでアプリケーションを入れて実行することがあるから、とのことで、なるほどなあと納得した次第です。
Steam Deckには何がいいの?
だいぶ前置きが長くなりましたが、これらの指標を参考にカードを選ぶということになります。
ですが……先ほどちょっと書きましたが、ゲームってあんまりデータ書き込みしないし、特にランダムライトはまずしないし、高速にやり取りする必要があるなら、基本メモリ上の処理が多くなるように作るだろうし、ランダムリードのIOPSもそこまで必要とも思えないし……という感じで、あんまり規格が参考にならないなと感じます。
Steam Deckの場合、ゲームのデータ本体はいつでも再DL可能、セーブデータはSteamクラウド対応タイトルならSteamクラウドにありますから(現代でもたまーにセーブデータがローカルにのみ置かれるタイトルがあるので注意)、SDカード内は基本的に仮置き用テーブルみたいなものですから、割と雑に選んでもいいのではないかと思います。
リード性能が高いとロードが短いかもという期待は持てますし、変な作りのゲームがあることも想定して、念のためIOPSも高い方がいいかなとなると、UHS-Iで、UHSスピードクラスは3(ビデオスピードクラスで言うとV30)で、A2あたりがいいのかなあ……という程度です。
(基本的にライト速度よりリード速度が速いので、最低60MB/secのV60は過剰、というよりUHS-IでV60やV90を保証してるカード見たことない。UHS-IIで保証してるカードはUHS-I接続した時にはそこまで速度が出ないわけで……)
容量的には本体が64GBモデルだとシェーダーキャッシュが結構なサイズになるので、512GBが適当かと思います。(1TBはまだGB単価も高いですし)
メーカーについてはあまり云々したくないのですが、まあ定番として知られているのはSanDisk, Samsung, Transcendになりますでしょうか。
私はSwitchとSwitch LiteにはGigastone、Steam Deckにはシリコンパワー(ケチってみたかったので、あえてA1)にしています。
今回初めて買ったシリコンパワーはまだ評価する段階ではありませんが、Switchに買って特に文句なかったGigastoneは、もうSanDiskやSamsungと変わらない値段になってしまいましたのでお買い得とおすすめしても仕方なくなってしまいました……。
あ、もし万が一ですが、SDカードにWindowsを入れて……などと考えている方がいたら、A2の方がいいでしょうね。(代替セクターの数とか違うかもしれないし、OS入れるんなら一流ブランド品にするかな……)
重要な注意
なお、Amazonで購入するときは、同じ仕様なのに他のメーカーより異常に安い商品に気をつけましょう。容量偽装だったり、そもそも機能しなかったりするみたいですよ。
ロゴすら入ってない(つまり「見た目はmicroSDカードだが、microSDカードだとは言っていない……!」という)やつもありますが、ロゴが入っていてもこの値段はありえないからこれ偽装だな……みたいなことを判断しないといけません。
まあ、Amazonで買うなら販売店がAmazonか、メーカー直営だったり大手家電だったりの信頼できる店舗になってるものがおすすめですね。PCで見た時に「今すぐ購入」のボタンのすぐ下あたりに、
出荷元 Amazon.co.jp
販売元 Amazon.co.jp
と表示がされてると思いますので、そこを確認しましょう。